通分・約分のつまずき ― 「大きさを変えずに形を変える」が伝わらない

「分数がわからない」という相談は、3年生で分数そのものの意味につまずく場合と、5年生で通分・約分の手続きにつまずく場合とで、見えている景色がまったく違います。今回書くのは後者です。分数がどういう数かは分かっているのに、大きさを変えずに形だけを変える操作でつまずくケースについてです。

分母だけを書き換えて、分子はそのままにした答案を見たことはありませんか。通分は「分母をそろえるための作業」だと、私も最初はそう考えていました。調べてみると、そうではありませんでした。

つまずきの原因

原因1:「分母をそろえる」だけだと思っている

文部科学省の小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編には、「分母が違う分数を分母が共通な分数に直すことを通分という」と書かれています(第5学年 A 数と計算)。ここで大事なのは「分母が共通な分数に直す」という部分です。分母を変えるときに分子も同じ倍率で変えなければ、もとの分数とは別の大きさになってしまいます。分母だけ書き換えて分子を放置した答案は、この一点が抜けています。

原因2:約分を「途中」で止めてしまう

約分は通分と逆の操作で、分母と分子を同じ数で割って形を小さくします。2で1回割ったところで手が止まり、まだ割れる分数のまま答えにしてしまう場面がよく起こります。「もう割れない形になるまで」という終わりの基準を持たないと、正しい計算をしていても答えが完成しません。

原因3:形式だけを覚えて、意味を置き去りにする

学習指導要領解説は通分の指導について、「形式的に操作するだけでなく,その意味をよく理解し,大きさの等しい分数に着目できるようにすることが大切である」と述べています。分母の最小公倍数を見つけて分子にも同じ数をかける、という手順そのものは覚えられます。ただ、それが大きさを変えずに形を変えているだけだという意味が抜け落ちると、なぜその手順が必要なのかが分からないまま作業だけが残ります。

家庭での教え方

手順1:同じ大きさの分数を並べて見せる

2分の1、4分の2、6分の3を、同じ長さの帯や折り紙で並べます。見た目の大きさが全部同じであることを確かめてから、「分母と分子に同じ数をかけても、大きさは変わらない」という一文を言葉にします。通分は、この性質を使って2つの分数の分母をそろえているだけだと伝えます。

手順2:分母を変えたら、分子も一緒に動かす

通分の練習では、「分母に何をかけたか」を声に出す習慣をつけます。分母を3倍にしたら分子も3倍。ここを機械的な手順としてではなく、「同じ数をかけたから大きさは変わっていない」という確認とセットにします。

手順3:約分は「これ以上割れない」まで

約分の答え合わせでは、「まだ割れる数はないか」を最後にもう一度聞きます。2で割れることに気づいても、そのあと3でも割れる分数は珍しくありません。1回割って終わりにしない習慣を、声かけで作ります。

避けたいこと

分母だけ書き換えて分子をそのままにした答案を見つけたとき、「分子も変えて」とだけ言うと、次も同じ間違いを繰り返します。「分母に何をかけた?」「じゃあ分子は?」と、かけた数を本人の口から言わせるほうが、次に自分で気づけるようになります。

練習の進め方

  1. 5年生の分数の性質は、大きさの等しい分数の穴うめから始まり、約分、2つの数の通分、3つの数の通分、大小比較へと進みます。等しい分数の穴うめを「簡単だから」と急がないことが、あとの通分・約分の土台になります
  2. 同じ単元には、わり算の商を分数で表す練習や、分数と小数を行き来する練習も含まれています。分数の意味をいろいろな角度から確かめられる並びです
  3. 通分ができるようになると、分数のたし算(異分母)分数のひき算・加減混合に進みます。学習指導要領解説はこの理由を、「これは,単位を揃えて計算するという加法や減法の計算の基本になる考え方である」と説明しています。通分はたし算・ひき算の前段階の作業ではなく、その計算そのものを支えている考え方です

調べてわかったのは、この順番は教材でも同じだということでした。等しい分数を確かめる練習を、約分・通分より先に置いています。

よくある質問

Q. 通分と約分、どちらを先に練習すべきですか?

A. 家庭で新しい順番を作る必要はありません。教材の並びどおり、大きさの等しい分数の穴うめ→約分→通分の順で進めば、約分で「同じ数で割る」動きに慣れてから、通分で「同じ数をかける」動きに進めます。どちらも同じ性質の裏表なので、途中で順番が前後しても大きな支障はありません。

Q. 最小公倍数を知らないと通分はできませんか?

A. 学習指導要領解説は、「二つの分数を通分するときは,分母として,二つの分母の最小公倍数を用いると簡潔に表すことができる」としています。裏を返せば、最小公倍数でなくても、2つの分母に共通する倍数であれば通分自体は成立します。数が大きくなって計算しづらいだけです。最小公倍数は「必須の知識」というより「楽に計算するための道具」だと考えてください。倍数の学習が多少あやふやでも、通分の練習を止める必要はありません。


通分・約分は、5年生の分数計算のなかで最も地味な単元です。派手なつまずきが出にくいぶん、分母だけ書き換えて終わっている答案を見逃しやすいので、丸つけのときに分子まで見てあげてください。


この記事は、diglabo を作っている親が書いています。教育の専門家ではありません。教え方の一般的な部分は、日本の教科書や学習指導要領で確かめたうえで書いています。

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