九九が言えても筆算でつまずく理由 ― かけ算の筆算の手順

九九が言えるようになったからといって、筆算のかけ算がすぐにできるとは限りません。九九は合っているのに、筆算の書き方の手順でつまずく子は少なくありません。

筆算のまちがいは、九九のまちがいだと思われがちです。けれども、つまずいているのはたいてい別の手順のほうです。

九九ができても、筆算は別の力がいる

文部科学省の小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編には、「乗数が1位数の計算の場合,数のまとまりに着目して計算する。」と書かれています(第3学年 A 数と計算)。「これは,筆算の仕方に結び付く考えである。」ともあり、九九という1けたどうしの計算を、まとまりごとに使えるかどうかが筆算の土台になっていることが分かります。

つまり筆算でつまずく子は、九九を忘れているのではなく、九九という部品を「どの位のまとまりに使うか」を組み立てる段階でつまずいています。2けた×1けたのうちは九九をそのまま使えばよいので気づきにくいところです。3けた×1けたや2けた×2けたに進んで初めて、位を意識できていないことが表に出てきます。

原因1:2段目を「1つ左にずらす」がない

2けた×2けたの筆算では、十の位をかけた答え(2段目)を1つ左にずらして書きます。このずらしをせずにそのまま下に書いてしまうと、答えが本来より極端に小さくなります。2段の左はしがそろっていたら、この型を疑ってください。

原因2:くり上がりを先に足してしまう

23×4の計算では、まず3×4=12で2を書いて1をくり上げます。次に2×4=8にくり上げた1を足して9、という順番が正しい手順です。ここを、くり上げた1を先に2に足してから3にかけてしまう子がいます。23×4を122とするようなまちがいが根強く残ります。かける動作とたす動作の順番が入れかわっているのがこの型です。

家庭での教え方

この2つを同じ力だと、最初は思っていました。九九という部品と、位のまとまりを組み立てる手順は、別々に練習できるまったく別の力だと知り、この2つを分けて意識するようになりました。

手順1:1けたずつ、九九で確かめてから書く

筆算を始める前に「3×4は?」と1問ずつ声に出して確かめ、答えが合っていることを確認してから書かせます。九九があやふやなまま筆算の手順だけを覚えさせると、あとで原因を切り分けられません。答えがまちがっていたときに、九九のまちがいなのか、位のずらし方や足す順番のまちがいなのかが分からなくなります。先に部品を確かめておくことが、結局は近道になります。

手順2:2段目は「1つ左にずらす」を声に出す

十の位をかける段に来たら「1つ左にずらして書く」と声に出す習慣をつけます。マス目のあるノートを使うと、1段目と2段目で1マスずれていることを目で確認できます。声かけだけより定着しやすくなります。

手順3:くり上がりは「かけてから足す」の順を固定する

「かけて、くり上がりを足す」の順番を、毎回同じ言い方で確認します。先に足してしまうまちがいは、この順番が固定されていないために起きます。

避けたいこと

筆算のまちがいを見て「九九からやり直し」と決めつけないでください。九九自体は合っていることが多いものです。原因を取りちがえると、できていた部分まで不安にさせてしまいます。まちがえた筆算を1問見せてもらってください。九九の答えと、位のずらし方と、くり上がりを足す順番の3か所を順番に確認するだけで、原因はたいてい絞り込めます。

練習の進め方

  1. かけ算(2けた・3けた)は、計算、筆算、文章題の順に並んでいます。まず計算で九九のまとまりを確かめ、筆算で書き方の手順を練習します
  2. 筆算は2けた×1けたから3けた×2けたまで段階的に進みます。まちがえた型が出たら、同じ構成のバリアントで繰り返してください
  3. 文章題まで進めると、九九と筆算の両方を「どんな場面で使うか」まで結びつけられます

同じ解説には、この学習について「ここで育成される資質・能力は,第4学年の多数桁の除法の学習や第5学年の小数の乗法及び除法の考察に生かされるものである。」とも述べられています。かけ算の筆算で位を意識する練習は、4年生のわり算(÷1けた)の筆算にそのままつながります。学年をまたいでここまでつながっているとは、私は知りませんでした。

よくある質問

Q. 九九があやふやなまま、筆算の練習を始めてもいいですか?

A. あまりおすすめしません。筆算は九九を「部品」として使う手順です。部品自体が不確かだと、手順のまちがいなのか九九のまちがいなのか区別できなくなります。九九(6から9・1のだん)が1問2秒程度で言えるようになってから筆算に進むと、原因の切り分けがしやすくなります。

Q. 電卓で答え合わせをさせてもいいですか?

A. 答えが合っているかの確認には使えます。ただし、まちがえた問題は電卓の答えを見て終わりにせず、どの段でずれたかを一緒に確かめてください。答え合わせと原因の確認は別の作業で、電卓は前者しか代わってくれません。


筆算のかけ算は、九九という土台の上に、位をそろえる手順を積み上げる単元です。土台がしっかりしていれば、手順のずれは1つずつ直せます。


この記事は、diglabo を作っている親が書いています。教育の専門家ではありません。教え方の一般的な部分は、日本の教科書や学習指導要領で確かめたうえで書いています。

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