学習ガイド

倍数と約数の教え方 ― 「12の約数」で1と12が抜ける理由

「12の約数を書いてみて」と言うと、2、3、4、6と書いて手が止まる。1と12が抜けている場面を見たことがあるかもしれません。抜けているのは計算力ではなく、約数をどこまで探せばよいかの見当です。

文部科学省の小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編は、この単元のねらいを「ある数の約数や倍数の全体をそれぞれ一つの集合として捉えられるようにすることをねらいとしている」としています(第5学年 A 数と計算)。

私はこの単元の目標を、九九のように個々の約数をすばやく言えることだと思い込んでいました。調べてみると、目標は個々の暗記の速さではなく、その数の約数「ぜんぶ」をひとまとまりの集合として見わたせるようになることでした。ここまで踏み込んだねらいだとは知りませんでした。

つまずきの原因:約数と倍数を「集合」として捉えられていない

原因1:約数の列挙で、1とその数自身を書き落とす

解説には「12 を割り切ることができる整数を 12 の約数という」とあります。12は1で割り切れ、12でも割り切れるので、1と12もれっきとした約数です。ここを書き落とすのは、約数を12より小さい数の中だけで探そうとしている、というサインです。かけて12になる数の組を全部さがす、という探し方に切りかえない限り、1と12は視界に入ってきません。1と12の欠けた集合は、正しい集合になりません。

原因2:公約数か公倍数か、場面で迷う

「たて8cm、よこ12cmの紙を、あまりなく同じ大きさの正方形に切り分けたい」なら公約数、「8分おきのバスと12分おきのバスが、次に同時に出発するのは何分後か」なら公倍数。この2つの場面を取りちがえる誤りが最も多く出ます。見分け方は答えの大きさです。正方形の1辺は8や12より小さくなるはずなので公約数、バスがそろう時刻は8分後や12分後より先のはずなので公倍数。答えが元の数よりどちらに動くはずかを先に見当づけると、公約数と公倍数のどちらを計算すればよいかで迷いません。

原因3:倍数の数え方に0を混ぜてしまう

解説には「3に整数をかけてできる数を3の倍数という」とあります。「整数をかけて」という言い方だけを見ると0をかけてもよさそうに見えますが、学校ではこのとき0を倍数に含めない約束になっています。3の倍数は3,6,9,12…と1からかけ始めて数えるのが決まりで、ここでつまずく子は少なくありません。

家庭での教え方

手順1:約数は「かけ算のペア探し」で全部見つける

12なら、1×12、2×6、3×4というように、かけて12になるペアを小さい順に探します。ペアで探すと、片方の相手として1と12も自然に出てくるので書き落としません。同じ数どうしのペアが出たら、そこで探索は終わりという目印になります(36なら6×6です)。

手順2:公約数か公倍数かは「答えが元の数よりどうなるか」で確かめる

式を立てる前に、「答えはもとの数より小さくなるはずか、大きくなるはずか」を声に出させます。分ける場面なら小さく、重なる場面なら大きくなるはずだと見当がつけば、最大公約数と最小公倍数のどちらの計算に進めばよいかを自分で選べます。

手順3:倍数は九九の逆として書き出し、0を入れない

「3の段を1からかけていくと?」と聞き、3×1、3×2、3×3…と1からかけて倍数を作らせます。九九の並びそのものなので、九九がすらすら出るお子さんには負担の少ない練習です。

避けたいこと

「最大公約数」「最小公倍数」という用語を先に暗記させ、あとから場面をあてはめさせる順番は避けたいところです。用語より先に、分ける場面と重なる場面の違いを日常の言葉で確認してください。

練習の進め方

  1. 整数の性質(約数と倍数)の単元は、約数と倍数の列挙、公約数・最大公約数、公倍数・最小公倍数の順に一続きで並んでいます
  2. 約数を探す作業は、九九(6から9・1のだん)の逆引きが速いほど楽になります。九九にまだ迷いが残る段があれば、そこを先に固めるほうが結果的に近道です
  3. 分数の約分・通分は、ここで練習した公約数・最小公倍数をそのまま使う場面です。分数の性質に進む前に、列挙をなめらかにしておくと後が楽になります

よくある質問

Q. 大きな数の約数を全部見つけるコツはありますか?

A. 1×その数から順に、かけてその数になるペアを探す方法が確実です。1と12、2と6、3と4のように、小さいほうの数を1から順に増やしていき、ペアの数どうしが逆転したら探索は終わりです。36なら1と36、2と18、3と12、4と9、6と6まで進んだところで、6×6は同じ数どうしなので、そこで打ち切ってよい合図になります。40くらいまでの数であれば、この方法で十分に探しきれます。

Q. 素数はこの単元で教えるべきですか?

A. 素数(約数が1とその数自身しかない数)は、この単元の範囲外です。本格的に扱うのは中学以降になります。「約数が2個しかない数もある」と気づく程度で十分で、深追いは不要です。


約数や倍数は、答えを1つ探す単元ではなく、集合として見わたす単元です。書き落としが続くうちは、覚え方より探し方を確認する時間にあててください。


この記事は、diglabo を作っている親が書いています。教育の専門家ではありません。教え方の一般的な部分は、日本の教科書や学習指導要領で確かめたうえで書いています。

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