学習ガイド
速さが割合より一段むずかしい理由 ― 種類の違う量を1つにする
「分速300mの自転車と、時速12kmの自転車、どっちが速い?」——単位のそろっていない2つの速さを比べる問題の前で、お子さんの手が止まる場面を見たことがあるかもしれません。九九や筆算のように、やり方そのものが分からずに止まるのではなく、比べる前の一歩でつまずいています。
速さと「割合」は、どちらも同じ5年生で習う単元です。割合が比べているのは、もとにする量と比べる量という同じ種類の量どうしです。ところが速さで比べているのは、道のり(km)と時間(分)という、そもそも種類の違う2つの量です。ここが、割合よりも速さを難しくしています。
文部科学省の小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編には、「第5学年の速さなど単位量当たりの大きさの学習においては,基本的な量の性質をもっていない量を比較するのは初めてであるので,異種の二つの量の割合として捉えられる量を比べることの意味を十分理解できるようにすることが大切である」と書かれています(第5学年 C 変化と関係)。
私は最初、速さは割合の応用問題の一つだと思っていました。調べてみると、解説はわざわざ「初めて」という言葉を使っていて、速さは割合よりもう一段むずかしい発想だと知りました。
つまずきの原因:長さと時間、種類の違う量をひとつにする
原因1:道のりと時間を「1つの量」にする発想が新しい
速さを表すには、移動した長さと、かかった時間という2つの量が必要です。解説にも「速さを,単位時間当たりに移動する長さとして捉えると,(速さ)=(長さ)÷(時間)として表すことができる」とあります。1時間で40km進むなら時速40km、1分間に300m進むなら分速300m。速さは「1時間あたり」「1分あたり」に進む長さとして作られた、長さでも時間でもない新しい量です。ここをのみこめないまま公式だけ覚えると、道のり÷時間か時間÷道のりか、毎回迷います。
原因2:1時間20分を1.2時間と計算してしまう
最も多いまちがいが、時間の単位のあつかいです。1時間20分を1.2時間として計算する誤りが目立ちます。時間は60分で1時間になる60進法ですが、小数は10進法です。20分を「0.2」と置きかえてしまうと、この2つの数え方がまざってしまいます。
原因3:単位の言いかえで60をかける・わるが逆になる
秒速を分速に、分速を秒速に言いかえるとき、60をかけるところを60でわってしまう、あるいはその逆の誤りが続きます。答えの秒速が分速より大きくなっていたら、この取りちがえです。
家庭での教え方
手順1:公式は(速さ)=(道のり)÷(時間)の1つだけと決める
道のりを求める式、時間を求める式は、すべてこの1つの式を変形しただけだと伝えます。「みちのり・じかん・はやさ」のような図を使う学校もありますが、図を先に覚えさせるより、この1つの式の意味から出発するほうが、変形した式も自分で作れるようになります。
手順2:時間は計算の前に「分」か「時間」のどちらかにそろえる
「1時間20分」を見たら、まず「80分」に直してから計算する。この一手間を式の前に置く習慣を作ると、原因2のまちがいはほぼ防げます。
手順3:単位の言いかえは「1分間で何m」の絵で確認する
1秒間に5m進むなら、1分間(60秒分)では5×60で300m。60をかけるかわるかを覚えるのではなく、「1つ分の量が何回積み重なるか」を絵で確認すると、逆になりません。
避けたいこと
単位の言いかえだけを、九九のように暗唱で覚えさせるのは避けたいところです。60倍の意味が抜けたまま覚えると、忘れたときに戻る場所がなくなります。
練習の進め方
- 速さの計算は小数のわり算が土台です。小数のわり算が不安なら先にそちらを固めます
- 速さの単元は、速さを求める、道のりを求める、時間を求めるの三用法から、2ステップの問題、単位の言いかえ、速さの比較の順に並んでいます
- 速さは単位量あたりの大きさという単元群の一つです。こみぐあいや人口密度など、同じ「1あたり」の考え方の問題と合わせて練習すると、速さだけでは見えにくかった構造がはっきりします
よくある質問
Q. 「みちのり・じかん・はやさ」の図を使うのはだめですか?
A. 図そのものを否定する必要はありません。ただし図だけで覚えると、道のりと時間のどちらが分かっていて何を求める場面かを確認せずに、数字をあてはめるだけになりがちです。まず(速さ)=(道のり)÷(時間)から式を立て、図はそのあとの確かめに使うと安定します。
Q. 60進法の時間の計算が、いつまでも身につきません。
A. 時計の絵や実物の時計を横に置いて、20分が何分にあたるかを目で確かめながら計算させてください。1時間が60分であることが体に入れば、あとは慣れの問題です。
速さは、小学算数で初めて「種類の違う2つの量」を扱う単元です。分からなくて当然のところでつまずいているだけなので、くり返しの量より、意味を確認する時間を優先してください。
この記事は、diglabo を作っている親が書いています。教育の専門家ではありません。教え方の一般的な部分は、日本の教科書や学習指導要領で確かめたうえで書いています。
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